スイス連邦工科大学ローザンヌ校のグループが、誘電エラストマーアクチュエータ用カーボンブラック電極のインクジェット印刷を実現しました。。
この研究成果は、 Electroactive Polymer Actuators and Devicesで発表されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
論文:
Schlatter, Samuel, Samuel Rosset, and Herbert Shea. "Inkjet printing of carbon black electrodes for dielectric elastomer actuators." Electroactive Polymer Actuators and Devices (EAPAD) 2017. Vol. 10163. International Society for Optics and Photonics, 2017.
誘電エラストマーアクチュエータ(Dielectric Elastomer Actuators(DEAs))は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する効率が非常に良いアクチュエーターであり、今後のキーデバイスとして注目されています。
しかし、このDEAsの電極の製造には現状多くの課題があることが知られています。DEAsの電極には、導電性、伸縮性、耐久性といった特性の他に、複雑なパターニングが可能であることも求められています。
現状のDEAsの電極は手作業やスタンプによって作製されていますが、作動電圧を低下させるためにより薄膜化やミリメートルオーダーでの微細化が求められています。特にこの変化は、生物医学分野、光学系、およびマイクロ流体学における装置への適合において顕著です。
このような電極製造の課題に対し、任意な基板に任意のパターンを形成できるインクジェット印刷技術は、課題を克服できる技術として期待されています。
まず、インクジェット印刷は非接触技術であり、非常に薄い自立膜に印刷することができます。第2に、インクジェットプリンタの高精度は、ミリメートル規模の複雑な電極形状を印刷することを可能です。
同グループは、カーボンブラック電極混合物の調製を行い、そのインクをインクジェット印刷することで電極の作製を行いました。
実際に印刷された電極の特性を取得値が論文に記載されています。未延伸状態での電極のシート抵抗は13kΩ/□〜30kΩ/□であり、50%伸張すると、1層(〜0.5μm厚)および2層(〜1μm厚)電極の絶対抵抗はそれぞれ9倍および24倍増加したとのことです。
印刷された電極は、約1MPaの弾性率を有し50%のストレッチを1500サイクルにわたって実施する耐久試験の結果、約7%抵抗が増加したことを示したとのことです。
以上の結果から、同グループが調合したカーボンブラックベースの電極は高い耐久性と伸縮性、接着性を有し、DEAsの電極として適していることを実証したとのことです。
これらの試験結果はカーボン電極のインクジェット印刷が今日のDEAsに適していることを示していると同グループは主張しています。また、今回の研究によって発表された印刷手法は非接触であるため、他の印刷物と組み合わせて、複雑な統合構造を作り出すことができると期待されています。
Comments