ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのグループが、インクジェット法を用いて準安定なβ型グリシンの単離を実証しました。この研究成果は、Crystal Growth & Design(2017)に掲載されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
論文:
Buanz, Asma BM, and Simon Gaisford. "Formation of Highly Metastable β Glycine by Confinement in Inkjet Printed Droplets." Crystal Growth & Design 17.3 (2017): 1245-1250.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.cgd.6b01633
インクジェット印刷技術は、基材上にplオーダーの液滴を滴下する技術です。
同グループは、このインクジェット技術を準安定な結晶の作製に用いました。
同グループはグリシン水溶液をガラスまたはアルミニウム基板上にインクジェット法で滴下することでグリシンの準安定なβ型結晶の形成をもたらすことを見出しました。
インクジェットで生成される約100plの微小液滴を堆積させ、液滴サイズごとに生成される結晶の調査を行いました。
徐々に着滴量を増やしていった結果、液滴体積が0.1μl以上に増加した時点で安定なα型と準安定なβ型の混合物が発生したとのことです。
更に液滴体積を10μlに増加した結果、空気ー水の界面においてα結晶が形成されたとのことです。
ナノスケールではβ型が熱力学的に安定であるため、インクジェットで形成されるようなplオーダーの微小液滴においては乾燥も急激であり、作製される結晶がβ型への核生成が有利に働き、α形態への変換が阻害されていると考えられるとのことです。
液滴体積が増加すると、熱力学的に安定なα型が形成されているとのことです。
また、異なる基材においても同様の結果が得られたことから、基材表面は結晶化の形態に影響を及ぼさないことを確認しています。
このようにインクジェット法で作製される液滴の特徴であるplオーダーの小滴と乾燥の速さを活かすことで、従来の生成方法では作製が困難な準安定な結晶の単離が可能となるとのことです。
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