東京農工大学のグループが、 蜂蜜のような非常に粘り気の強い液体を射出できる装置を新たに開発しました。この成果は3Dプリンタや金属配線などの次世代インクジェット技術をはじめ、無針注射や細胞印刷など幅広い分野での応用が期待されます。 本研究成果は、 Physical Review Applied (2018/1/31付)に掲載されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
論文:
Onuki, Hajime, Yuto Oi, and Yoshiyuki Tagawa. "Microjet Generator for Highly Viscous Fluids." Physical Review Applied9.1 (2018): 014035.
https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/PhysRevApplied.9.014035
液体を射出する技術は、インクジェットプリンタを始めとした広い分野で利用されています。インクジェットプリンタで用いられているピエゾインクジェット、サーマルインクジェット法は液体を小さな穴から射出しますが、これらのインクジェット法で取り扱える液の粘度は低く、20 mPa・s以下が一般的です。
また、液体塗布時の滲みや希釈インクによる発色性の悪化など品質の低下が非常に大きな問題となり、その解決方法が求められていました。
同チームはこの課題に対し、液体射出の駆動力として、液体容器に打撃を与える手法に着目しました。
開発した装置では打撃を与える手法に加え、液体の入った容器内に細管を挿入し、細管内部の液面を下げる工夫を施しました。この工夫により、細管内の液体を非常に効率良く加速できることを発見したとのことです。
その結果、水の1,000倍の粘度を持つ液体やマニキュアのような特殊な液体の射出に成功し
ました。さらに、開発した液体射出メカニズムを、高速度カメラを用いた実験および数値シミュレーションにより明らかにしました。これにより、高粘度液体の射出の様子も理論的に予測可能となりました。この成果は、従来のインクジェット技術の課題であった粘度の制限という壁を取り払うだけでなく、3次元ものづくりや生体印刷など次世代ものづくりの基盤になることが期待されます。
本研究で開発した装置は、3Dプリンタや金属配線などに用いられる液体樹脂や金属など非ニュートン流体と呼ばれる特殊な液体も射出できる見込みがあるとのことです。さらに生体液など小さな粒子を含んだ液体は医療分野で多く使われているため、これら様々な液体の射出を行える本装置は、生体印刷や無針注射など医療分野の技術発展への貢献も期待できるとのことです。
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