University of Copenhagenの研究グループが、インクジェット印刷可能であり医薬品として用いられる多孔質基材を調査しました。
この研究成果は、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceuticsに掲載されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
論文:
Iftimi, Laura-Diana, et al. "Edible solid foams as porous substrates for inkjet-printable pharmaceuticals." European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 136 (2019): 38-47.
インクジェット技術は、任意の場所に任意の量を注入できるオンデマンド性が特徴の技術です。近年多くの分野でこの技術が活用されており、医薬品も活用が見込まれる用途の一つです。
特にデジタル制御によって任意の量を調整できる特徴を活かした、特定患者向けの錠剤の作製は活用が期待されています。
薬品量がわずかであれば、非吸収基板や錠剤に塗布することでオーダーメード錠剤が実現できます。
しかし、薬品量が多い場合は、薬品を多く吸収し保持できる食用でかつ高いインク吸収能力を持つキャリアーが必要となります。
同グループは、本研究において食用可能でかつインク吸収能力の高い多孔質で柔軟な基材を調査しました。
研究では、プロプラノロールを注入薬剤として用いて評価しています。薬学的に承認され、食用のセルロース誘導体とガムをさまざまな添加剤と一緒に混合し、基材のベースとして評価しました。
凍結乾燥、真空オーブン乾燥、室温での乾燥など、固体フォームのさまざまな調製方法が検討しました。
その結果、高分子溶液の凍結乾燥が、多孔性でかつ柔軟性があり、機械的に安定したスポンジ状の基材となることを確認しました。
本研究の結果、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ベースの固体フォームは、連続インクジェット印刷での使用に最も適していることを確認したとのことです。
可塑化HPMCフォームは、非可塑化無添加フォームと比較して、連続気泡細孔構造と高い多孔性により、異なる溶媒に対して優れた吸収能力と速い浸透速度を有しているとのことです。
なお、インクジェット印刷されたプロプラノロールは、溶解媒体と接触するとすぐに剤形から放出されました。
この研究は、可塑化HPMCに基づいて製造された固体発泡体が、高用量の製造における多孔質担体として大きな可能性を示しているとのことです。
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